帝国陸軍の最後〈1〉進攻篇 (光人社NF文庫)



帝国陸軍の最後〈1〉進攻篇 (光人社NF文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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軍隊内部の確執も描く

 このシリーズは、伊藤正徳の名著。実戦に従軍した軍隊が、どのような行動をしたのか、陸軍現地部隊を描くことで、結果として、先の大戦の全体がわかるようになっている。まるで当時の新聞報道を順々に読んでいるような分かりやすさだ。この種の戦記ものにありがちな、大東亜戦争に対する中途半端な反省を交えたりしないで戦いを振り返っていない点も明解だ。

 もっとも興味深かったエピソードは、ガダルカナル戦の第2次総攻撃時点の、軍隊内部の確執だった。

 東海林連隊は、オランダ領インドネシアの侵攻作戦のときに、バンドン要塞攻略で一番乗りした。本来は別の師団の部隊があげるはずだった功名を意図せず、抜け駆けしてしまったのだ。東海林連隊は、ガダルカナルで、このとき抜け駆けされた師団の指揮下にはいることになり、ガダルカナルの戦場で、「抜け駆けされた師団から」意趣返しをされていたのだった。

 「おれたちの手柄を横取りした東海林連隊」に加えられた、暗黙のいやがらせとは、ガダルカナル飛行場攻撃の攻撃配置を、東、中央、西の3方向ある配置のうち、作戦発起点から最も遠い、東側に指定されたこと。しかも部隊の出発は、3連隊の最後尾からだった。ただでも狭いジャングル道を、前の2つの連隊を追い越して、配置につかなければならなかったのだ。懸命に配置につこうとするが、間に合うはずはない。

 土台が困難な作戦の中で、東翼部隊の十分な配置を待つことなく、攻撃部隊の連携を欠いたまま悲惨な挫折を遂げた第二次総攻撃を前にした、味方作戦軍内部の確執に触れられていたのが興味深かった。米軍という敵を会敵する以前に、陸軍内部の嫌がらせと戦うことになっていたとは。。。
陸軍を解さなければならない必然性とは

平易な言葉で書かれた本作は、とにかく分かりやすく、かつての巨大組織陸軍が太平洋戦争で歩んだ道筋をダイジェストに伝えてくれます。綺麗事ばかりだとか都合のよいエピソードの選りすぐり、個々の苦痛がまったく書かれていないなど批評の槍玉はいくらでもありますが、本作の書かれた時代を考えれば、これだけのことを書いたこと自体、当時としては画期的であり、その視点は今日的に見てもいささかの歪みもなく受け入れられる普遍性を持っています。

陸軍と海軍を明確に分けなければ絶対理解できない太平洋戦争を、その基本に忠実に、ことさら本巻では海軍の「攻勢終末点」をキーワードに明確に解説しています。マレー、蘭印、比島からビルマ、ニューギニアにいたる緒戦の成り行きが、何度読んでも飽きない文体で書かれています。



光人社
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